まず、在庫の把握と管理に注意が必要です。どうしても食材は生鮮品が多く,消費期限があります。破産手続開始前に可能な限り使い切るか,適切な方法で処分する必要があります。また,アルコール類などの在庫も正確に把握し,破産管財人への引き継ぎ準備を進めなければなりません。単純に合理的理由なく廃棄してしまったり無償で譲渡したりする不適切な処分は後々問題となる可能性がありますから,逐一弁護士と相談しながら進めましょう。
次に、店舗の賃貸借契約の整理にも注意が必要です。通常,賃貸借契約には解約予告期間が定められていますから,その間の賃料も発生しますし,原状回復義務に伴う高額な費用が発生するケースも少なくありません。敷金や保証金の返還についても,原状回復の範囲・内容と共に,賃貸人との交渉が必要となります。
そして,アルバイトを含む従業員の対応も考えなければなりません。破産をする場合は原則全員解雇になりますが,解雇の時期・未払給与・解雇予告手当の精算を法的に適切に行う必要があります。更に,従業員の社会保険の各種切替え手続や離職票の交付など解雇に応じて必要となる事務処理が必要となっていきます。
仕入れ先との取引関係を整理しておく必要もあります。食材や飲料,消耗品などの仕入れ先に対する未払金がある場合は受任通知を送付し,その支払を停止する必要があります。特定の仕入れ先だけを優先して支払うことは,破産法上の「否認」の対象となる可能性があり,のちに支払った金額の返還を求められる場合があります。
破産を検討される場合,上記のような点を考慮しながら,資金繰りが限界に達する前に,早めに閉店の準備を始めることが重要です。廃業準備をしながら,現金をできる限り手元に残し,破産申立費用や未払給与の支払いに充てられるように弁護士に相談しながら計画的に進めることが肝要です。破産手続を進めるためには,弁護士費用や裁判所に納める予納金(主に破産管財人の報酬など)が必要です。最低でも百万円単位の現預金がないとそもそも破産手続を行うことすらできません。経営者の手元資金や事業の売上金などを適切に管理し,破産費用を捻出できるように準備していかなければなりません。