コラム

債務整理を依頼していただいた後に依頼者様にしていただくこと

借金の返済ができなくなった時点で弁護士に相談・依頼をする必要性・緊急性はこのHPで述べてきました。

では,弁護士に債務整理を依頼した場合,依頼者様は何をしなければならないのかを述べたいと思います。

①任意整理の場合

当事務所については原則弁護士費用をいただいてから対応の依頼を受けた各債権者と和解交渉をすることにしています。弁護士費用は一括でいただいていますが,債務整理を検討される方で一括で弁護士費用を支払える方は多くはないと思います。そこで,当事務所としては弁護士費用について最大4回程度の分割払いを可としています。つまり,弁護士費用の分割払い終了後に業者への和解交渉と返済が開始すると思っていただければと思います。弁護士費用を支払っている段階では当事務所が対応の依頼を受けた業者に関しては返済をする必要はありません。よって,二重に弁護士費用と業者への返済をしなくてもいいです。依頼者様としてしていただくことは弁護士費用をきちんと支払い,業者への返済をきちんとしていただくことのみです。弁護士費用の支払いすら困難と明らかになった場合は任意整理はおそらく不可能なので自己破産への方針変更の検討をすることになるでしょう。

②個人再生の場合

まず,個人再生申立てで必要な資料を集めていただくことです。当事務所で取得できるものは取得を検討しますが,勤務先からの退職金規程等弁護士が取得をはばかれるものもあります。よって,依頼後に具体的に個人再生で必要な資料一覧をお伝えしますので,当該資料を集めていただくことになります。これができなければ,個人再生はできません。

また,当事務所は,弁護士費用については一括でいただいていますが,個人再生を検討されている方で一括で弁護士費用は支払える方は多くはないと思います。したがって,当事務所では最大10回分割まで弁護士費用の分割に応じています。裁判所への個人再生の申立時期ですが,弁護士費用の分割回数-5か月(※)を目安に申立てをしています。ただし,この※の期間の弁護士費用の分割に滞納があれば申立てをしないことにしていますので,弁護士費用を滞りなく支払っていただくことが依頼者様にしていただくべきこととなります(なお,弁護士に依頼後は業者への返済はすべてストップになりますので,弁護士費用の支払いと業者への返済が被ることはありません)。そもそも,個人再生の弁護士費用の分割の滞納がある時点で履行可能性に疑問があり個人再生は難しいと思われますので,自己破産に方針変更の検討をすることになるかと思います。

③自己破産の場合

まず,破産申立てで必要な資料を集めていただくことです。当事務所で取得できるものは取得を検討しますが,勤務先からの退職金規程等弁護士が取得をはばかれるものもあります。よって,依頼後に具体的に破産で必要な資料一覧をお伝えしますので,当該資料を集めていただくことになります。これができなければ,破産はできません。

また,破産の管財手続の場合,通常は10から20万円の予納金が必要になります(10万円なのか20万円の見込みなのかはご相談時に説明させていただきます)。この予納金がなければ破産手続は進みません。したがって,一括で準備が不可能な場合は分割で予納金を積み立てていくことになりますが,この積立ができなければ破産手続を進めていくことができませんので,滞りなく積立をしていただくことが相談者様にしていただくべきことになります。

破産による財産処分を回避する目的での資産の名義変更の是非

借入額が多額になり破産をしなければならないと自覚をしているものの、自覚しているがゆえに破産の前に自動車や不動産や保険を自身から他人へ名義変更をしてもいいのかという質問が時々されます。

結論からいうと、これは絶対にしてはいけません。弁護士に依頼前にこういう行為をすると依頼をお断りする場合もありますし、弁護士に依頼後にこういう行為をされた方については辞任をさせていただくことになってしまいます。

破産法第252条第1項第1号には「債権者を害する目的で,破産財団に属し,又は属すべき財産の隠匿,損壊,債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと」とあり、破産による財産処分を回避する目的での名義変更はこのような免責不許可事由に該当し、借金がゼロにならない可能性が高まってしまいます。

また、否認権といって他人に財産の名義変更をしても最終的には裁判所が選任する管財人により名義変更した処分の取り戻しがされ、処分される可能性も相応にあります。この否認権の行使という点で破産手続が複雑になり解決まで長期化したり、管財予納金が高額になったりと不利益が生じてしまいます。

よって、資産の名義変更はやめましょう。

自己破産が賃貸住居に与える影響

自己破産をご検討されている方で、賃貸アパート、賃貸マンションなど、賃貸住宅にお住まいの方も多いと思います。しかし、

・自己破産したら、賃貸借契約が解除されて、アパートを追い出されないか?

・自己破産しても、新しく賃貸マンションに入居できるか?

といったご心配をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

●自己破産をしても原則アパートを追い出されない

破産法上も、民法上も、自己破産を理由に賃貸借契約を解除することは認められていません。

賃貸借契約書に「自己破産する場合は賃貸人は契約を解除できます」と特約があっても、当該特約は無効と最高裁が判断しています。

他方、家賃の滞納が3月以上ある場合は賃貸借契約の解除が法的に認められる可能性が高いので、この場合はアパートを追い出されてしまう可能性があります。よって、破産を選択される方に家賃の滞納がある場合は家賃の滞納を賞与等で解消してから破産申立をすることになります。

●自己破産をすることで、法律上、賃貸借契約が制限されることはありません。

しかし、アパートやマンションを借りる際に、借主や保証人の経済的信用を含めた入居審査が行われることがあり、事実上、入居可能物件が限られてしまうということはあるようです。ただ,住宅ローンのある方が破産をされたケースにつき私が経験する限り全員が賃貸物件に転居できています。

ギャンブルや浪費があっても破産はできるか

破産法には免責不許可事由という借金をゼロにすべきではないと評価すべき事情が列挙されており、そのうちの代表例がギャンブルや浪費になります。

浪費やギャンブルが免責不許可事由になるのは、これらの行為により「著しく財産を減少させたり、過大な債務を負担したりした場合」です。つまり、多少金遣いが荒かったり、ギャンブルに手を出したりしても、その金額が非常に少なく、財産減少や借金につながっていなければ、免責不許可事由には該当しません。

浪費やギャンブルが免責不許可事由と評価される場合は、以下のようなケースです。

  • パチンコ、パチスロ、競馬、競輪などのギャンブルにはまり、借金を重ねて返済ができなくなった
  • 収入に照らして不相当に高額な物を購入して、借金が増えた
  • 収入に照らして不相当に贅沢な生活をして、借金が増えた

宝くじの購入も、この要件に該当することがあります。

また、ギャンブルとは少し違いますが、株式投資や先物取引、FX取引なども、「射幸行為」として、免責不許可事由に該当してしまうので、注意が必要です。射幸行為とは、「収入に照らして、不相当な金遣い」という意味です。

他方、免責不許可事由に該当する事情があっても、裁量免責という制度で借金がゼロになることがあります。裁量免責とは、免責不許可事由があっても、その事案全体を評価して、裁判所が裁量により、免責を認めることができる、という制度です。

たとえば、債務者がしっかり反省をしていて、もうギャンブルも浪費もしておらず、今後も決して行わないと誓っていること、また、浪費やギャンブルによって借り入れた金額がさほど大きくないこと、浪費やギャンブルをしていた期間が短いことなどは、裁量免責を認める方向で考慮してもらうことができます。

このように、自己破産には裁量免責制度があるため、浪費やギャンブルによって借金した場合であっても、自己破産をあきらめる必要はありません。

クレジットカードの現金化やローンで買った物の売却

クレジットカードの現金化は、クレジットカードが後払いであることを利用して新幹線のチケットやゲーム機のような物を購入してすぐに換金したり、ほとんど価値のないものを購入させて代金の一部をキャッシュバックするといったものです。
この場合、一時的には現金が手に入りますが、翌月にはクレジット代金の請求が来ますので、根本的な解決にはなりません。また、換金目的でカードを利用することは、「クレジットカード会員規約」に違反する行為で、カードの利用ができなくなったり、残金の一括請求等を求められることがあります。
さらに、クレジットカードを利用して物を購入したのに現金が振り込まれないとか、最初に約束したお金をもらえないなどのトラブルに巻き込まれるということもあります。
そして、現金化のためにクレジットカードで商品を購入する行為は、カード会社から現金を詐取する行為として「詐欺罪」に該当する可能性がありますし、クレジットカードで購入した商品は、代金が完済されるまでカード会社に所有権がありますので、これを売却してしまうことは「横領罪」に該当する可能性があります。
破産手続きにおいても、不利益処分(破産法252条1項2号)として免責不許可事由に該当しますので、免責が受けられない可能性があります。
ローンを組んで購入した自動車は、通常、ローン会社に所有権が留保されています(契約内容によってはそうでもないことがありますので、契約当初の規約や契約書はきちんと残しておいてください)。したがって、たとえ自分の名義で登録されていたとしても、勝手に売却するということは契約違反であり、前述したクレジットカードの現金化と同様に「横領罪」に該当する可能性があります。
このように、クレジットカードの現金化や、ローンを組んで購入した自動車をローン完済前に売却する行為は、犯罪となったり、債務整理の手続きを困難にしてしまうものですので、このような行為を行わず、適切に債務整理の手続きを行っていく必要があります。クレジットカードの現金化等をしなければならないと思うような場合には、その前に弁護士に相談してください。

なお,このような「クレジットカードの現金化」や「ローンで買った物の売却」を既にしてしまった方としては今回のコラムを読んで不安に思われるかと思いますが,何とかなるかもしれませんので,一度当事務所までご相談ください。