コラム

債務整理を検討されている方で勤務先に借入がある場合

多額の借金があって債務整理を検討されている方の中には勤務先から借入をされている方がいらっしゃるかもしれません。勤務先からの借入は債務整理においてどのような取り扱いになるのでしょうか。

まず,任意整理を選択する場合は,勤務先を整理の対象として勤務先に弁護士が通知を送る(介入する)という選択肢を取らないことが多いので,勤務先に弁護士が連絡を取るようなことはありません。

しかし,任意整理を選択する絶対条件として勤務先からの借入の返済(通常は給与天引きになっているでしょうが)を含めて,収入・収支のバランスから問題なく返済ができることが必要です。任意整理における返済が困難である場合は個人再生又は自己破産を選択することになります。

自己破産や個人再生の場合は残念ながら勤務先に介入せざるをえず,弁護士から勤務先に債務整理を開始したという通知を送ることになります。ですので,会社には債務整理をしていることや債務整理をする程に借金をしていることが発覚します。なお,勤務先からの借入の存在を隠したまま個人再生や自己破産を進めようとされる方も稀にいますが,手続において給与明細書を裁判所に提出する必要があり,給与明細書に借入金返済の痕跡(例えば,返済金という費目)がありますから,隠しても後から発覚してしまうことが多いです。免責不許可事由として虚偽の債権者名簿の提出(破産法252条1項7号)が挙げられますが,要するに勤務先からの借入を隠すことは破産免責において借金がゼロにならない事情になりますので,注意が必要です。

過払金を利用しての借金返済は現在において期待できるのか

TVCMを通じてご存知の方も多いかと思いますが,過払金請求とは、カードローン・キャッシングで法定利率より支払い過ぎていた利息を取り戻すことをいいます。広告等を通じて過払金の存在を知り,自身にも過払金はあるのではないか,過払金で借金の返済ができるのではないかと期待される方もおられるかと思います。

しかし,数百万円と多額の借金の返済が期待できる程に多くの過払金が戻ってくるには,あくまで私の感覚ですが,利率29パーセント等の高い利息を前提に平成10年と現在より20年以上前から消費者金融等と継続的にキャッシング取引をしていた必要があると思います。なお,銀行との取引やショッピング取引の場合では古くから取引があったとしても過払金は全く期待できません。

なので,平成31年の時点では過払金の存在を期待して借金返済に充てることはあまり期待できないのではないかというのが私の見解です。数百万円の借金を何とかするには個人再生や自己破産を最初から検討した方がいいのではないかと思います。なお,個人再生や自己破産をする際には依頼を受けた弁護士として過払金の存在を調査する義務がありますので,調査により過払金がある場合は,当事務所においては着手金0円で回収(報酬は20%過払金の中から頂戴します)し,それを利用して借金返済ができるのであれば自己破産・個人再生から方針変更をしますし,借金返済ができなくとも個人再生・自己破産の弁護士費用に充当させていただくことができます。

債務整理を検討しているが,銀行や信用金庫から借入のある方へ

債務整理を検討されている方で銀行や信用金庫から借入がある方は以下の点につき注意してください。

①借入のある銀行が給与振込口座であるか

②借入のある銀行に預金がないか

個人再生や自己破産の場合,借入先に銀行や信用金庫があるときは,当該銀行等に弁護士から受任通知を発送します。受任通知を確認した銀行側としては当該通知が届いた時点における相談者様の預金残高と借入金との間に相殺を図ることになります。そして,受任通知が届いてから銀行の保証会社(アコム等の消費者金融の場合もあるし,信用金庫の場合はしんきん保証基金など)に代位弁済される2から3月程度の間は借入先の銀行口座が凍結されることになります。口座が凍結されると,ATMから自由にお金を引き出せなくなります。このように,銀行から借入がある場合,自身の大切な資産である預金が相殺という形で消えてしまう,口座凍結により自由にお金が引き出せなくなるというリスクがあります。借入先の銀行が給与振込口座ではない,銀行口座に預金がない方は全く問題ありませんが,そうでない方は以下の対応をしていただく必要があります。

①借入のある銀行が給与振込口座である場合

勤務先と取引先銀行との関係等の観点から可能である場合は,給与振込口座の変更手続を勤務先にお願いしてください。借入先以外の銀行・信用金庫を新・給与振込口座としていただければと思います。

仮に,給与振込口座の変更が勤務先としてNGである場合は,口座凍結覚悟で銀行に受任通知をそのまま送らざるをえません。しかし,私の経験する限り,宮城県にお住まいの方がよく利用されていると思われる七十七銀行・仙台銀行・みずほ銀行・三菱UFJ銀行については,通帳・銀行届出印・運転免許証などの身分証明書を持参して取引支店の窓口から振込された給与相当額につき引き出せるようです。なので,一定期間手続は面倒になりますが,必ずしも給与を引き出せずに生活ができなくなるということはありません。(この点の銀行側との交渉は弁護士がさせていただきます)

②借入のある銀行に預金がある場合

相殺されないように,全額預金を引き出していただいてから銀行に受任通知を送ります。

債務整理中に旅行、引越しはできないのか?

まず,法的には任意整理や個人再生の場合は旅行、引越しの制限はありません。しかし、多額の負債を抱えて債務整理をしているにもかかわらず過大かつ不必要な旅行代等の負担をすることで債務整理が頓挫をしては意味がありません。この点は厳に慎んでいただければと思います。

他方,自己破産の場合、一定期間、引っ越しなどの居住場所の制限を受けることがあります。
つまり、破産手続開始決定時の住所から、自由に移動することができなくなります。また、長期旅行することなどにも制限が課されます。破産者が逃亡したり、財産を隠したりすることを防ぐための制限です。

ただし、引っ越しなどが絶対にできなくなる、という意味ではありません。裁判所に申請をして許可してもらうことができたら、自己破産中でも引っ越しや長期出張、旅行などは可能です。たとえば、もっと安い家賃の家に引っ越したい場合や、今の家を換価しないといけないので、賃貸住宅に移らないといけない場合などには、問題なく引っ越しできます。

自己破産でも、すべてのケースにおいて居住場所の制限がなされるわけではありません。自己破産には、同時廃止と管財事件という2種類の手続があります。同時廃止とは、財産がほとんどない人のための、簡易な破産手続です。これに対し、管財事件とは、財産が一定以上ある人のための、複雑な破産手続です。そして、居住場所の制限が課されるのは、管財事件になった場合だけです。同時廃止の場合は、居住場所の制限を受けず、自由に引っ越しをすることができます。しかし、自己破産手続中であれば、たとえ同時廃止の場合であっても、引っ越し先について裁判所へ報告しなければなりません。

借入ができなくなるのが困る,まだ借入をしたい方へ

債務整理をして、債務整理をすることで借入れができなくなるのが嫌だというお話をよくお聞きします。
そういう方に私がお話するのは、「多額の借金が既にあったからこそ、その支払いのために借入れが必要だったのではないですか?」「借入れが少なくなって、今より支払いが少なくなったり、借入れそのものがなくなってもまだ借入れしなければならないですか?」といった内容のお話をさせていただいています。
多くの方は「そうなったら借入れをする必要はない」とおっしゃられますが、やはり借入れができなくなるということに抵抗感はかなりあるようです。
私は、「将来、まだ借入れが必要になった訳でもないのに、そのことを気にして、現時点で支払いが難しいのにも係わらず、現状の借金問題を解決しようとせず、この今を犠牲にする必要はない」と考えています。

債務整理をすれば、今抱えている借入れ問題は解決できる可能性が大きくあります。
現時点での問題は借入れが原因となって発生しているものなので、「借入れをする=借入れ問題を抱える」ということになります。
今債務整理をして、将来再び借入れをして、今と同じように借入れ問題で悩むようなことを繰り返されるおつもりですか?
借入れをするということは、将来、自分自身に入ってくるであろうというお金を先使いしているだけなのです。
当然、その借入れに金利が付けば、負担は大きくなり、ひょっとしたら、将来入ってくる予定のお金を既に上回る借入れをしているかもしれませんし、予定していたお金自体が入ってこないかもしれないのです。

債務整理というのは一種の救済措置のようなもので、支払不能・困難に陥った方を再生させることを目的とし、一生のうちに、そう何度も経験するようなことではありません。
将来、あるかどうかもしれない借入れ行為を気にするあまり、今の無理な支払いを続けていくのは得策ではないのです。

お子様の奨学金や教育ローンの利用を予定・利用されている方

第1 これから子の奨学金や教育ローンの利用を予定されている方

これからお子様が進学されて奨学金や教育ローンの借入れをご予定されている方は、債務整理をすると奨学金や教育ローンの借入れができなくなるのではないかとご不安に思われているかもしれません。しかし、奨学金については、あくまで借主はお子様であり、ご卒業後支払いをしていくこととなります。今までの事例では債務整理をしたから奨学金が無理だったという話は聞いたことはないので大丈夫であると思われます。

他方、教育ローンについては、借主がお子様ではなく債務整理をされる予定の方、もしくは債務整理をした方の場合には影響があると思われます。
借入れ申込み先にもよりますが、銀行などが扱う教育ローンは断られる可能性があります。
なぜなら、通常の貸付けになりますので、申込みを受けた銀行は信用情報機関に問合わせをすると思われ、債務整理をすると問合わせをした信用情報機関の情報に債務整理をしたという内容の記載があり、その情報を見た銀行は貸付けをしにくくなります。
一既には言えませんが、債務整理をおこなっても奨学金の場合はほぼ大丈夫で、教育ローンについては審査で断られる可能性があるということになります。

第2 奨学金を利用されている方で債務整理を検討されている方

1 奨学金の借入先の確認
もっとも多いのは日本学生支援機構(旧:日本育英会)からの奨学金だと考えられますが、学校独自のものやその他の奨学金制度もありますので、必ず借入先をご確認ください。
また、日本学生支援機構(旧:日本育英会)の場合には、減額返還・返還期限猶予の制度もありますので、そのような制度を利用することができないか、日本学生支援機構に確認し、検討をしてください。

2 保証人の有無の確認
債務整理をする場合、保証人がいるかいないか、保証人との関係性によって債務整理の方法が変わってきますので保証人がいるかどうかについてはしっかりと確認してください。
特に個人再生や自己破産の手続きを選択する場合には、保証人に残額の請求がいくことになりますので注意が必要です。日本学生支援機構(旧:日本育英会)で奨学金を利用している場合には機関保証の制度(保証会社が連帯保証する制度)もありますので、機関保証の制度を利用しているかどうかについても確認をしてください。

クレジットカードの現金化やローンで買った物の売却

クレジットカードの現金化は、クレジットカードが後払いであることを利用して新幹線のチケットやゲーム機のような物を購入してすぐに換金したり、ほとんど価値のないものを購入させて代金の一部をキャッシュバックするといったものです。
この場合、一時的には現金が手に入りますが、翌月にはクレジット代金の請求が来ますので、根本的な解決にはなりません。また、換金目的でカードを利用することは、「クレジットカード会員規約」に違反する行為で、カードの利用ができなくなったり、残金の一括請求等を求められることがあります。
さらに、クレジットカードを利用して物を購入したのに現金が振り込まれないとか、最初に約束したお金をもらえないなどのトラブルに巻き込まれるということもあります。
そして、現金化のためにクレジットカードで商品を購入する行為は、カード会社から現金を詐取する行為として「詐欺罪」に該当する可能性がありますし、クレジットカードで購入した商品は、代金が完済されるまでカード会社に所有権がありますので、これを売却してしまうことは「横領罪」に該当する可能性があります。
破産手続きにおいても、不利益処分(破産法252条1項2号)として免責不許可事由に該当しますので、免責が受けられない可能性があります。
ローンを組んで購入した自動車は、通常、ローン会社に所有権が留保されています(契約内容によってはそうでもないことがありますので、契約当初の規約や契約書はきちんと残しておいてください)。したがって、たとえ自分の名義で登録されていたとしても、勝手に売却するということは契約違反であり、前述したクレジットカードの現金化と同様に「横領罪」に該当する可能性があります。
このように、クレジットカードの現金化や、ローンを組んで購入した自動車をローン完済前に売却する行為は、犯罪となったり、債務整理の手続きを困難にしてしまうものですので、このような行為を行わず、適切に債務整理の手続きを行っていく必要があります。クレジットカードの現金化等をしなければならないと思うような場合には、その前に弁護士に相談してください。

なお,このような「クレジットカードの現金化」や「ローンで買った物の売却」を既にしてしまった方としては今回のコラムを読んで不安に思われるかと思いますが,何とかなるかもしれませんので,一度当事務所までご相談ください。

債務整理における自動車の取り扱いについて

1 自動車を手元に残せる場合

⑴ 任意整理の場合は自動車は維持できます。(自動車ローンがある場合は自動車ローンに弁護士が介入しないことが前提になります)

しかし,任意整理は毎月の設定返済額を返済可能といえる場合でしか選択できません(履行可能性の全くない任意整理は不可です)。

⑵ 自動車ローンが残っていない自動車について

ア 個人再生

無条件で維持できます。しかし,個人再生は毎月の設定返済額を支払可能といえる場合でしか選択できません(履行可能性のない個人再生は不可です)。

イ 破産

自動車の価値とその他の資産価値が99万円以内であれば自由財産拡張により自動車は維持できます。

99万円を超えていても,その他の資産の維持を諦めるか,99万円を超えた金額につき破産開始決定後の収入から積み立てをすれば,自動車の維持ができる可能性があります。

⑶ 自動車ローンが残っている場合

自動車ローン会社による引揚に応じざるをえない場合が多いので,自動車は維持できないものと考えてください。

ただし,生計を別にする親戚が自動車ローンについて第三者弁済をしてくれるのであれば,ローン会社の引き揚げの対象にはなりません。

⑷ 自動車の名義が本人以外の場合

債務整理をしても本人以外の親族等の資産には影響ありませんので,本人名義以外の自動車は破産であっても問題なく維持できます。

 

2 自動車ローン会社による自動車の引揚

⑴ ローンが残っている自動車については,ローン会社が引き揚げます。
そのため,自動車ローンが残っている場合,受任通知発送後は,自動車の使用を控えるとともに,ローン会社から引き揚げ方法の指示があるまで,自動車の処分はやめてください。

⑵ 引き揚げの前に,バッテリーの充電を忘れずにしておくことが望ましいです。
また,トランクなりダッシュボードなりから私物を取り出しておくほか,車検証,自賠責保険証明書,任意保険の保険証券,自動車税納税証明書(継続検査用),取扱説明書,整備手帳   (=メンテナンスノート),メーカー保証書,リサイクル券といった関係書類をひとまとめにしてすぐに渡せるようにしておくことが望ましいです。

⑶ 自動車の引き揚げ自体は通常,ローン会社の委任を受けた引き揚げ専門の会社が実施します。
そして,自動車を引き揚げる際は通常,「車両お預かり書」といった書類を交付してくれます。

⑷ ローン会社が自動車を引き揚げた場合,財団法人日本自動車査定協会(中古自動車査定士が所属する民間団体です。英語名の略称はJAAI)等の査定価格に基づく売却価格から,査定料, 自動車税,自動車税延滞金等の費用を控除した残額を,残債権(元金,遅延損害金,督促費用等)に充当されることとなり,充当後債権額が債務整理で問題となる債権額となります。

 

3 自動車ローン会社による自動車の引揚ができない場合

⑴ 自動車の購入者から委託されて販売会社に売買代金の立替払をした者が,購入者及び販売会社との間で,販売会社に留保されている自動車の所有権につき,これが,上記立替払により自 己に移転し,購入者が立替金及び手数料の支払債務を完済するまで留保される旨の合意をしていた場合に,購入者に係る再生手続が開始した時点で上記自動車につき上記立替払をした者を所有者とする登録がされていない限り,販売会社を所有者とする登録がされていても,上記立替払をした者が上記の合意に基づき留保した所有権を別除権として行使することは許されません(最高裁平成22年6月4日判決)。
この最高裁平成22年6月4日判決を前提とした場合,当時の約款を基準とすれば,車検証の所有者がローン会社であれば,自動車の引き揚げができるのに対し,車検証の所有者が販売店である場合,自動車の引き揚げができないこととなりました。

⑵ 最高裁平成22年6月4日判決当時の約款は,①自動車の留保所有権の被担保債権の範囲に販売店の有する自動車売買代金以外の債権(例えば,手数料)が含まれていた,②三者間契約の約款上は販売店が留保所有権の主体であることが明示されていなかった,③ローン会社が留保所有権を取得する根拠が明確に記載されていないといった特徴がありました。
しかし,最高裁平成22年6月4日判決以後の約款では,①留保所有権の被担保債権の範囲が販売店の有する自動車売買代金債権に限定され,②販売店が留保所有権の主体であることが明示され,③ローン会社が留保所有権を取得する根拠が法定代位であることが明示されるようになりました。
そのため,最高裁平成22年6月4日判決以後の約款を用いた自動車の購入者が破産した事案については,ローン会社は,法定代位を根拠として,自動車の留保所有権を,自己の登録名義を備えることなく別除権として行使すること(つまり,管財人に対して自動車の引き渡しを請求すること)が認められるようになっています。

⑶ 自動車の購入者と販売会社との間で当該自動車の所有権が売買代金債権を担保するため販売会社に留保される旨の合意がされ,売買代金債務の保証人が販売会社に対し保証債務の履行として売買代金残額を支払った後,購入者の破産手続が開始した場合において,その開始の時点で当該自動車につき販売会社を所有者とする登録がされているときは,保証人は,上記合意に基づき留保された所有権を別除権として行使することができます(最高裁平成29年12月7日判決)。

⑷ 平成22年最高裁判決を前提にすれば普通自動車でかつ車検証の名義がローン会社以外(販売店・本人名義など)のときは自動車引揚拒否をすることになりますが,私の感覚では多くの自動車ローン会社がこれに対応して契約約款を変更してきてますので,結局は自動車引揚に応じなければならないケースがほとんどいう印象です。